今回、Ankerのモバイルバッテリーを調べている中で「実際に使える容量は表記の6割程度になる」といったレビューを見かけました。(今回レビューしたモバイルバッテリー)
モバイルバッテリーに記載されているmAhと、実際にスマホ充電で使える容量が異なるという話です。そこで本当にそうなのか整理してみました。
調べてみるとモバイルバッテリーに書かれている「mAh」という数値、実はそのままスマホに使える容量ではないことがわかりました。
では、実際記載されているmAhはなんの値?
日本では電気用品安全法(PSE規格)によって、モバイルバッテリーは「ワット時定格量」の記載が義務化されています。
海外では、見栄えのする「バッテリー容量」を書いて、定格容量は小さく書く傾向が多いです。つまり、mAh値だけを見ると
バッテリー容量 > 定格容量
となります。その理由は難しい話になるため補足事項に記載します。
定格容量を調べる方法1:メーカーや本体表記から調査する

上の写真のように、実際に本体に記載されています。今回のバッテリーでいうと、定格容量15,500mAh(定格電圧5Vdc)と記載があり、つまり、内部に蓄えられたエネルギーを5Vに変換した場合の理論的な取り出し可能容量を示します。
ただし、実際に5V充電するときはType-Aが一般的。電圧幅の広いType-Cを使用するときには電圧が高くなるため、自分が使用したい電圧でないなら、次の方法で計算する必要があります。
定格容量を調べる方法2:バッテリー容量から計算する
もし、定格容量の記載がなくても、以下の計算で求められます
①バッテリー容量と電圧を調べる
今回の場合は27,600mAh、バッテリー電圧3.7V
②電力を求める(電力は容量×電圧 詳細は後述)
27,600 × 3.7 ≒ 102Wh
③出力時の電圧で割る
今回方法1と同様の内容で
102Wh ÷ 5V ≒ 20,400mAh
④変換効率を適用する。
変換効率は電圧を上げるうえでの効率
およそ70%~90%と言われています(製品によってばらつきあり。正確な値は不明)
間を取って80%で計算(今回説明すると長くなるため詳細は割愛)
20400 ×0.8 ≒ 16,320mAh
方法1とは異なり、この値は理論値になるため、実際に使える値はこれよりも少ない場合が多いです。
商品説明の「〇〇mAh」だけでは、実際に使える電力量はわからない
先程の定格容量の方法2の計算でありましたが、一旦電力に換算して容量を求めていましたよね。つまり、電力量はWhで表されるため、以下の説明からmAhだけでは電力量はわかりません。
モバイルバッテリーで使われる単位のmAh(ミリアンペアアワー)は、どれだけの電流をどのくらい時間流せるかということです。簡単に数式で表すと
容量(mAh) = 電流(mA) × 時間(h)
ちなみにmAhの1000倍がAhです。
中学の理科でも学びましたが、電力(W)は「電圧×電流」、電力量(Wh)は「電圧×電流×時間」、つまり「電圧×容量(Ah)」で表されるため、電流だけでは実際に使えるかわからないことになってしまいます。
補足1:バッテリー容量(公称容量)について
メーカーがよく表記している数値です。「〇〇mAh」などの数値です。
モバイルバッテリーの仕組みとして、内部電池と言われているものをセルと呼びます。内部電池はセル公称電圧(3.6V程度)前提で使用されます。
ただし、実際にスマホの充電に使用されている電圧は5Vや9Vであり、そのまま内部電池の電圧から充電することができません。
補足2:定格容量について
モバイルバッテリーとしてUSB出力するときに実際に使える容量です。出力時にはセル電圧よりも電圧を上げるため、昇圧するときに電圧変換の回路でロスがどうしても発生します。さらにバッテリー自身の制御回路にも損失があります。そのためバッテリー容量の6~8割程度が実際に使える容量となります。
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